ゾンビ処刑人 映画ネタバレ感想&考察

注意! ネタバレあり〼

原題:THE REVENANT 意味:帰ってきたもの、亡霊

©2011. Putrefactory Limited, LLC

別物の映画を2本くっつけたような作品。
真面目な映画のオープニングとエンディングで、フザけたゾンビ映画をサンドしたような、それでいてちゃんと1本の映画としてまとまっているという、少し変わった作品。

二人の仲間と戦地で車を走らせている主人公バート。

仲間の一人が言う「人を殺すためにここに来た。人を殺して問題を解決する。」
もう一人が言う「俺は違う。民主主義と正義を実行するためだ。」
男が反論する「でも結局は人を殺す。そこに善悪の境界はない、あるのは生か死かの選択だけ。」

主人公バートは、選択の自由があるなら善悪の境界はあるはずだと反発する。
選択がない人生なんて暗闇だと。

そして子供を轢いてしまうバート。

仲間は軍の命令を守って車を止めるなというが、バートは子供の安否を確認する選択をする。
そして隠れていた敵に銃殺される。

バートの遺体と銃撃戦の音と荘重なクラシック音楽が流れる。

と、ここまでがオープニング。
この後、フザけたゾンビ映画へと様相を呈していく。
フザけたパートもオモシロイ。

一か月後、墓から蘇ったバートは親友ジョーイに助けを求める。

目がキモいとか、変な匂いがするとか、思ったことをすぐ口にする親友ジョーイは、アホだけど良いヤツの典型。
お腹空いてるんじゃないかと食事を提供すると、バートは口から真っ黒いタールのようなゲロをアホほど吐いて部屋を台無しにする。

やがてバートと共にジョーイまでもがゾンビとなって、世の中の悪い奴らを成敗してはその血を飲むようになる。

主人公バートはゾンビになったことを、第二の人生をもらったと感謝する。
「やり残したことを全部やる、もう過ちも後悔もしない、生きている」と大喜び。

世間ではヒーローの様に扱われて、調子に乗り始めるおバカな親友ジョーイ。

イケイケ過ぎるそんな人生にも必ず破綻が訪れて、ジョーイはギャングに復讐されて首を切られてしまう。

首を切られても死ねないジョーイは「殺してくれ」とバートに頼む。

ジョーイの首を潰し、恋人までも殺してしまったバートは無常を感じ、自殺を試みる。

もう過ちも後悔もしないと言っていたのに。

しかし、どうやっても死ねないバート。

危険人物とみなされたバートは、警官に取り囲まれ銃撃される。
一般市民が巻き込まれて大勢死んでいく中、バートは死ねない。

バートには「生か死かの選択権」すら既に無くなっていたのだ。

悲しげで荘重なオペラが流れ、真面目なクライマックスへと物語は向かう。

研究施設に収容されるバート。
バートの他にもたくさんのゾンビがいて、“蘇り” はバート一人の現象ではなかったことが明らかになる。

ここからエンディングへ向けて、切なさが前面に出始める。
死ねないバートの表情が切ない。
爽やかで切ない曲が流れ、音楽の効果が素晴らしい

バートとその他多くのゾンビが、小さな箱に詰められて戦地へとパラシュートで投下される。

オープニングでは、人を殺すために戦地に来たことに反対の意見だったバート。

しかしもう彼に選択の自由はない

ゾンビとなって人を殺すために戦地に送られたのだ。

バートにとって、そんな人生は暗闇でしかない。

フザけたゾンビものだったはずなのに、観終わった後に何だかしんみりしてしまう不思議にオモシロイ映画だった。


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新作はもちろん、旧作の希少なタイトルまでもしっかりカバーしている品揃えはさすが!


監督・脚本:ケリー・プリオー
撮影:ピーター・ホーキンス
音楽:ウェンデル・ホブス
製作年:2009年 / アメリカ