愛の施術 至極の教典TAO 映画ネタバレ感想

注意! ネタバレあり〼

原題:NO MIRES PARA ABAJO 意味:下を見るな


十九歳の青年が、二十八歳の女性から性の手ほどきを受けるという映画。

しかし本質はそこではなく、TAO〈道〉の養生術の一つである房中術(男女の性愛術)によって、宇宙自然の法則を一緒に探ろうね、というスピリチュアルなお話。

アンドレ・ブルトンの言葉に始まり、ジャラール・ウッディーン・ルーミーの詩で終わる。絵画的な画づくりや観念的な挿話など、一家言匂わせる映画だ。

青年が竹馬に乗って糸杉に抱き着くシーンなどは可愛らしくもあり、私はなぜだかレイモン・ペイネの絵を思い出してしまった。帽子のせいかもしれない。

さて、そこでこの邦題。
必死に考えた苦労が伝わってくるような、邦題の妙とでも言うべきタイトル。
好感度高い。

原題の「下を見るな」とは何を意味するのか。

  • 青年はヨーロッパの大道芸人が履く長い竹馬にのってチラシを配ったりしている
  • 青年は夢遊病の時に屋根伝いに歩いて、天窓から女性の部屋へと落ちる
  • その女性から学んだ TAO〈道〉はまだ序章に過ぎず、更なる高みを目指すべく彼の人生は続く

パッと思いつくのは以上であろうか。

男女の身体の陰陽を使って宇宙のエネルギーを循環させるべく、二人は美しい裸体を見せ合って、色んな体位で何度も何度も交わる。

言ってみれば、 ヨガの代替みたいな感じであろうか。
刹那的な快楽を求めるのではなく、忍耐と精神力が必要な鍛錬である。

青年はなかなか持続させられないのだが、女性が優しく何度も迎え入れてくれる。

そして青年はついに宇宙と繋がる。
別の場所を幻視し、瞑想状態へと入り、二人の境界は曖昧になっていく。

自らをディアスポラと称する彼女はやがて去って行く。
ずっと一緒にいたいとすがる青年に語る言葉がステキだった。

「僕も行かないし、私も残らない」

命短し恋せよモラトリアム。



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監督・脚本:エリセオ・スビエラ
撮影:ソル・ロパーチン
製作年:2008年 / アルゼンチン・フランス