注意! ネタバレあり〼
原題:THE VVITCH A New-England Folktale
意味:魔女 ニューイングランドの民話
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邪悪な魔女の存在が信じられ忌み嫌われていた時代の、実話を元にした話。
この作品はただのホラーにとどまらない、重層的な意味合いを隠した面白い映画だ。
傲慢とも言えるほどに狂信的な一家が、 教会と対立して村から追い出されてしまう。
映画の始まりは、その一家の長女の顔のクローズアップ。
不安げでもあり不満げでもある、思春期の彼女の表情。
教会への不満か、独善的な父への不満か、家族というしがらみへの不満か。
村から追い出された一家は、魔女が棲むとも知らず森の側で生活を始めるが、長女がわずかに目を離したすきに赤ん坊が攫われ、弟が森の奥で魔女に誘惑され精気を吸われて衰弱するという事件が起こる。
貧困から来る小さな嘘、成熟してゆく長女の身体。
あらゆる不快な現状が心を曇らせ、魔女裁判の縮図とも言うべき愚かな疑心暗鬼が家族内で繰り広げられる。
森に棲む魔女は実在しているのか、それとも醜い疑心暗鬼のメタファーなのか、曖昧とした映像が続く。
弟が死に、父親が死に、狂乱状態になった母は娘こそが魔女だと断罪する。
息子を誘惑し、夫を誘惑した淫売だと責め立てる。
長女は自分自身を守るために母を殺す。
一人生き残った長女は、悪魔と契約を交わし魔女となる。
森の奥へ入ると、全裸の魔女たちが踊り狂っている。
映画のラストは、全てを脱ぎ捨てた長女の享楽的で刹那的な笑いで終わる。
ホラー映画の体裁を採りながら、この時代に抑圧された女性が自我を解放するための苦難と苦痛をも表現している作品なのだと気づかされる。
原題「WITCH」の W が V を二つ並べて「 VVITCH 」と表記されていることについて、改めて考えさせられた。( “ VITCH ” を音読すればヴィッチである。つまり女性への侮蔑的な単語と同じ音となる。)
悪魔ルシファーの化身、黒ヤギさんの声としゃべり方が非常に魅力的で、乙女を誘惑する声そのものであった。
悪魔、恐るべし。
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新作はもちろんマイナーな旧作もしっかり取り揃えてある。
もちろん「ウィッチ」もちゃんとあります。
監督・脚本:ロバート・エガース
撮影:ジェイリン・ブラシケ
音楽:マーク・コーヴェン
製作年:2015年 / アメリカ