の・ようなもの 映画ネタバレ感想

注意! ネタバレあり〼

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森田芳光監督の劇場映画デビュー作。

優しく人生を見つめる青春群像劇。

当時のキャッチコピーは「人間って、なんて面白いんだろう。」

うだつの上がらない若手落語家 “志ん魚(しんとと)” を中心に、人々の人生を優しく淡々と写し撮っている。

お金がなくても仲間と夢を語り合う、売れない落語家たち。
明るくてお金持ちでインテリの風俗嬢エリザベス。
絵に描いたようなキャピキャピした女子高生。
くだらないことに夢中になる日常。
団地を走り回る第二次ベビーブームの子供たち。

どこか浮かれて熱を持ったはずの人々を、一歩引いて見ている監督の視線。

この奇妙な温度差こそが、この時代の空気感なのかもしれない。

現代では、セクハラ・女性軽視と言われそうな描写も出てくるが、監督の趣旨はそこにはない。
出てくるのは皆、あっけらかんとして明るく、自分の意志で生きているたくましい女性ばかりだ。
孤独を受け入れてなお、明るく笑う美しい女性だ。

「面白い人がいっぱいいるわね」と笑ったエリザベス嬢は、志ん魚が「僕達は恋人ですよね」と言えば、引っ越しなんてしなかっただろうか。
仲間たちとはしゃぐ志ん魚と、一人幸せそうにご飯を食べ一人風邪で寝込むエリザベス嬢の対比はどこか切ない。

それでも私は、夜道を黙々と歩く志ん魚と、彼の正式な恋人由美ちゃんが出会うことを祈った。

人生は切なくて、上手くいくことばかりじゃないけど、それでもみんな生きている。

映画のラスト、兄弟子の真打昇進パーティーでの映像がその事をヒシヒシと伝えてくる。

パーティーの終わり、気怠い雰囲気の中、みな思い思いに過ごしている。
尾藤イサオ氏が歌う切なげなエンディング曲「シー・ユー・アゲイン 雰囲気」が流れる。
その尾藤氏演じるお調子者の兄弟子が、明るい笑顔の陰で切ない表情を垣間見せる。
人生がまるっきり上手くいっているわけじゃない、それでも笑う、切ない。

こういう演技をさせると尾藤イサオ氏はピカイチだ。
どこか愛らしさの残る顔立ちと切ない表情のアンビバレンツ。
ぎゅんぎゅん心を捕まれる。

「シー・ユー・アゲイン 雰囲気」の雰囲気とはつまり「のようなもの」。
この映画はまさに、人生のようなものを、愛しく優しく写し撮ったようなものだった。

「シー・ユー・アゲイン 雰囲気」の作詞者「タリモ」とはタモリさんの変名ではなく、森田芳光監督自身のこと。

この歌と共に写されるラストシーンは、本当に本当に美しい。

本物の落語家さんや、小堺一機さん、ラビット関根(関根勤)さん、室井滋さんなどたくさんの著名人が出ているのも見どころ。
大好きなでんでんさんの若い頃のお芝居もたっぷり見られる。
昔の作品を観る楽しみの一つは、俳優さんの若かりし頃が見られることだなとも思う。


本作品の配信情報は2019年11月24日時点のものです。
最新の配信状況についてはホームページをご確認ください。

DMM.comのDVD宅配レンタルもあり。
旧作・名作を押さえた品揃えはさすが。
『の・ようなもの』ももちろんあります。


監督・脚本:森田芳光
撮影:わたなべまこと
製作年:1981年