第12回 永楽館歌舞伎 ネタバレ感想その2

注意! ネタバレあり〼

兵庫県豊岡市出石 第十二回 永楽館歌舞伎
2019年11月4日(月・休)~11月10日(日)

第12回 永楽館歌舞伎 千秋楽に行ってきました。

一、新作歌舞伎「道成寺再鐘供養~仙石権兵衛出世噺~」(どうじょうじごにちのかねくよう~せんごくごんべえしゅっせばなし~)のネタバレ感想はこちら ↓

永楽館歌舞伎2019サムネイル第12回 永楽館歌舞伎 ネタバレ感想その1

永楽館のある出石の町にはいたる所に幟が揚げられ、華やかに芝居気分を盛り上げてくれます。

永楽館歌舞伎2019小屋前

さて、2つ目の演目は、

「滑稽俄安宅新関」(おどけにわかあたかのしんせき)

とにかくめちゃくちゃな、もとい、ハチャメチャな演目でした。
河竹黙阿弥が書いた江戸時代の作品ですが、私は今回初めて見ました。
その時代時代の流行や時事ネタを即興的に取り込むのが、この作品の眼目とか。

安宅の新関では、通行料の代わりに一芸を披露しなくてはならず、関所を通るために様々な人々が一芸を披露していくという趣向。

「一芸無き者、固く通行許さざるもの也」と書かれた高札が掲げられています。

「勧進帳」でお馴染みの安宅関、富樫左衛門と言えば、爽やかな納戸色の着物姿が美しい好男子のイメージですが、この演目で出てきた愛之助丈演じる富樫は何とおじいちゃん。
立派な着物に着られて、ちょこなんと座る好々爺といった風情。
一つ目の演目での愛之助丈とは打って変わって、何とも小さく可愛く見えるので不思議です。
そんなおじいちゃん富樫と、富樫の両脇を固める二人の番卒が、通行人の一芸を審査します。

以下、通行人たちの様子を書いていきます。
登場順は覚えていないので箇条書きです。
記憶をたどって書くので、もしかしたら書き漏れがあるかもしれませんがご容赦ください。

まずは巡礼の少女おつる。片岡當吉郎丈です。

傾城阿波鳴門の少女の姿をした大男が「とーとーさーんーとー、かーかーさーんーはー」と子役然としたセリフ回しで笑いを誘います。

が、どうやら我々観客だけではなく、富樫にも番卒にも、どこをどうしても大男に見えるらしく、富樫がおつるに詰め寄ります。

富樫「娘と言うは、まさしく男」
おつる「なんで私を男とは」
と弁天小僧菊之助のパロディが始まります。
「もう化けちゃあいられねえ。おいら尻尾を出しちまうぜ」
と、正体を現すと何故か相撲取りという設定。
「姐さん、これが・・しがねえ姿の土俵入りでござんす」と急に一本刀土俵入。

目まいがしました。

そしておつる実は茂兵衛は、見事な土俵入りを披露して関所の通行を許可されます。

その後おつるは募金箱を持って客席をうろうろします。(沖縄と災害被災地への募金箱)
お客さんが何人か募金されていました。その度に、富樫と番卒がその方に向けて挨拶をして、客席からも拍手が起こっていました。
最後おつるが仮花道をはける手前で、一本刀土俵入のお蔦よろしく二階席から腰ひもに結わえた募金がおつるの元へ降ろされました。
粋なことをするお人がいるーと思ったら、どうやら水口一夫先生のようでした。さすがの演出。

粋な着流しに木製キャリーバッグをごろごろ引いて現れたのは通人、中村壱太郎丈。

一芸披露に何をするか考えた通人は、お土産のアピールを始めました。

そうです、毎年お馴染みのお土産紹介コーナーです。
いつもなら演目に口上があり、その口上で壱太郎さんがお土産紹介をしますが、今年は口上がなかったのでどうするのかと思っていたら、芝居の中にがっつり時間を取ってきました。やはりこれがないと観ている側も収まりません。大歓声でした。

「壱ネット 但馬」という看板を立てて(ジャ〇ネットタカタのパロディ)、キャリーケースの中からコウノトリのぬいぐるみ “コーちゃん” やら、愛之助さんがイメージキャラクターを務める “コウノトリ育むお米” の二合パックやらお酒やら紹介していきます。

そして何と、豊岡市のマスコット “コーちゃん” の着ぐるみが舞台に登場します。
舞台袖に引っかかりながら何とか出てきて、ヨタヨタと歩く姿が非常にカワイイ。

すると富樫が怪しいと言い出して、番卒二人が着ぐるみを脱がしにかかります。
えっ、着ぐるみ剥ぐとかタブーでは?やめてあげてー、と思っていたら中からなんと、水戸黄門の衣装を着けた中貝豊岡市長が出てきました。

私は初め誰か分からなかったのですが、「中貝市長ですー」という誰かの声で知りました。(舞台上も客席もすでにわちゃわちゃしていたのでもう誰が何を喋っているかカオスな状態でした。)

中貝市長が現れたと知って、富樫も番卒も通人も平身低頭、「来年もよろしくお願いします。」と言うと、市長は「よかろう!」と来年の永楽館歌舞伎開催も約束してくれました。

中貝市長が愛之助さんの方を向いて客席にお尻を向けていたのを、壱太郎さんが「市長、前向いてください」と促して爆笑をとる場面も。

もしあれが市長の演技だとしたら、なかなかの役者です。

中貝市長は、水戸黄門のテーマ「あゝ人生に涙あり」の音楽にのせて「蛍の光」の歌詞を見事に歌い上げました。
楽日だったから「蛍の光」だったのでしょうか?芸達者な市長さんです。
(ちなみに、水戸黄門のテーマは七五調の歌詞なら何でも合うらしいです。)

仮花道へ降りる時、壱太郎さんが着物の始末に手間取っている間に、市長は一人でどんどん去って行きました。
壱太郎さんは「あ、市長、待って」と言いながら慌てて用意をしますが、市長は真っすぐ前を見てどんどん先に行きます。市長オモシロ過ぎ。
後ろに壱太郎さんが居ないことにようやく気付いた市長が戻ってきて、今度はちゃんと壱太郎さんと一緒に帰っていかれました。

傾城梅川と亀屋忠兵衛が新口村へ行く途中だと言って関所へやって来ます。
梅川に上村吉弥丈、忠兵衛に上村吉太朗丈です。

関所で開口一番「親子ですか?」と聞かれます。
「年が離れすぎ」だの何だの言われて梅川が大号泣します。
「恋人よおおおぉぉぉおおおお」

吉弥丈がかなりはっちゃけておられました。
しつこく「おおぉぉあああぁああ」と号泣していました。

もはや完成度の高いコスプレにも見えますが、お二人とも超絶キレイなのは言うまでもありません。

そして突然の「お祭りマンボ」大音量。踊る忠兵衛。
マイクを握る梅川は「ミュージック、スターティンー」と叫び歌う。

笑い疲れしてきたところで、梅川忠兵衛から手ぬぐい撒きのサービスがありました。

ラスト、仮花道を颯爽と行こうとする忠兵衛を呼び止めて、舞台を降りるのを手伝ってとお願いする梅川。
手を差し伸べる仕草がとても自然で美しくて、手伝ってあげなきゃと思わせるはかなさがありました。

が、

「(吉太朗丈とは)三周り半も年が離れてるんだから(階段危ない)」と吉弥丈が自虐ネタで笑いを取っていきました。


もうこの辺りで、観ている私はだいぶお腹いっぱいになっていましたが、まだまだ彼らはその勢いを止めませんでした・・・。

ネタバレ感想その3へ続く

永楽館歌舞伎2019サムネイル第12回 永楽館歌舞伎 ネタバレ感想その3
永楽館歌舞伎2019お花

劇場内のお花の様子。
コーちゃんも手を振っています。