ダークスター 映画ネタバレ感想

注意! ネタバレあり〼

原題:DARK STAR

かつてのDVDジャケットには「爆笑SF」と銘打たれていたが、爆笑ではない

諦めにも似た乾いた笑い、それでも愛とユーモアが溢れる死生観が込められた作品だ。

ジョン・カーペンター監督の長編デビュー作。

共同脚本(出演も)のダン・オバノン氏は、かのリドリー・スコット監督『エイリアン』の原作脚本を書いた人であり、『バタリアン』の監督脚本の人でもある。

そんな天才二人が学生時代に自主制作した作品を、商業用にリメイクしたもの。

こういう系統の作品が好きな人は、みんな観ただろうか。
ホラー要素はなく、SF作品である。
登場人物みんな、地球からも見放された長い長い宇宙での生活に疲れ果て、どこかぼんやりとした不安感と危うさをまとっている。
こういう系統の作品が好きな人みんな観ただろうか・・・観てほしい・・是非

チープさの中にも、美しい死生観が表現された作品。

実に美しいオープニングとラスト。

宇宙空間にただ二人きり放り出されるドゥーリトル中尉とタルビー飛行士。

明るくもどこか斜に構えたテーマソング「ベンソン・アリゾナ」

その曲に乗せて、逃れることの出来ない死を実にユーモラスに受け入れるドゥーリトル中尉。
12兆3千億年かけて宇宙を一周する流星群になるタルビー飛行士。

さすが監督自ら手掛けているだけあって、音楽と映像の競演が実に見事に物語を語っている。

辺境銀河の不安定惑星を爆破する任務を負ったダークスター号には、2種類のAIが搭載されている。

マザーコンピューターのAIは、実に大雑把な性格。
「宇宙嵐がくるけど、わたし故障してるからあとは手動で何とかしてね」といった感じ。
一方、惑星爆破用の爆弾に搭載されたAIは、ただ実直に命令を遂行しようと頑張る真面目な性格。

誤作動により命令が出された爆弾に、爆破を中止するよう説得するため、ドゥーリトル中尉は哲学的疑問を爆弾AIに投げかける。

爆弾AIはその命題について考えるため一度は爆破を中止するが、 なまじ真面目な性格のためどんどん内省的になり、やがては孤独を感じて最終的には船もろとも自爆する。

考えすぎは良くないよ、と。シュール。

船員の一人であるピンバック軍曹と宇宙生物のやり取りは、まったくくだらないシチュエーションコメディ。

ただ宇宙生物のビジュアルが大きなビーチボールのようなチープさで、それだけならまぁ別にって感じなのだけど、最後の顛末に笑ってしまった。
その生物を麻酔銃で撃ったら破裂しそうだなぁと思って見ていたら・・笑ってしまったよ。さすがジョン・カーペンター監督。

実にくだらない乾いた笑いの中に、美しさが見え隠れする愛おしい作品。

ジョン・カーペンター監督もダン・オバノン氏も、やはり一方ならぬセンスを持っていたのだと、若かりし彼らの作品に熱いため息が出た。


DMM.comのDVD宅配レンタルでもあり。
新作はもちろん、旧作・名作もしっかり押さえているとはさすがの品揃え。
『ダーク・スター』ももちろんあります。


監督:ジョン・カーペンター
脚本:ジョン・カーペンター、ダン・オバノン
撮影:ダグラス・ナップ
音楽:ジョン・カーペンター
製作年:1974年 / アメリカ